Stability control
System


Technical information
from
Bruce Goldsmith




エアウェイブ社の歴史に残るヒットグライダー“スポルト”は明らかにパイロットクラスをターゲットにしたスポーツモデルです。スポーツモデルと言うからには滑空性能の向上が図られているのは当然の事、開発チームが最も重要視したのは旋回性です。パイロットが乗って“面白い”“気持ちいい”と感じる旋回操作時の反応の速さと回頭性の良さを軽いブレイクプレッシャーと共にDHV1-2という安定性が強く求められるの枠の中でいかに表現するかが開発時のポイントとなりました。
そこで私が考案したのが“スタビリティコントロールシステム”と名づけられた、センターに据えられたセルの幅や構造をグライダーのレベルに応じて最適化しグライダーの安定性を犠牲にすることなく、設計者が求める運動性能をグライダーに与え、パイロットが求める“楽しさ”を表現する事が出来る新しい設計技術です。
それぞれのグライダーにどの様にこの技術が応用され、どの様な効果を生んでいるのか見てみましょう。


1.DHV 1


このグライダーでは、センターセルがありません。又、センターのリブには左右両方からラインに連結された斜めリブが取り付けられ、出来るだけセンター部分が動かない様に制限されています。

この構造がもたらす効果は、左右の翼の間に起こる上下のずれを抑え、パイロットに左右に揺れる、“ぐらつき感”を与えない事と、パイロットの不必要な左右への姿勢変化による翼への無駄な力の伝達を抑えることにあります。

DHV1のグライダーに求められるのは、オーバーコントロールに耐える可能な限りの許容力を持っていること、不安定な挙動を必要以上にパイロットに伝えず、不安感を与えない事です。ゆえにこのセンターの構造はパイロットから翼、翼からパイロット双方の挙動の伝達を抑えることが出来、ウェイブなどDHV 1クラスのグライダーに最適であるといえます。



2、DHV 2−3/182o

このグライダーではセンターにラインも斜めリブも配置されていないスタンダードセルが使われています。よって、図の様に左右の翼の間に“ずれ”が生じます。

この“ずれ”の大きさは、ウェイトシフト時のグライダーの反応量・グライダーの挙動がパイロットに伝わる量に大きく影響します。この図はマジックの物ですが、ハイパフォーマンスグライダーでは敏感さ、動きの良さが要求されるため、このスタンダードセルの幅は182o(Mサイズ)でセンター以外のセルと同じ、ウェイトシフト時の“ずれ”の量は40o(Mサイズ)にセットされています。

このセッティングによりマジックでは、まるでパイロットのすぐそばにグライダーが在るかの様なダイレクトなハンドリング感が表現されています。




3、DHV 1-2

スポルトにもマジックと同じ様にセンターにスタンダードセルが用いられました。

しかし、その幅と“ずれ”の量は小さいものになっています。

このクラスのグライダーでは、良好なハンドリングと安定感の両方を実現しなければなりません。トータルバランスが重要になってきます。スポルトに採用されているスタンダードセルの幅は、センター以外のセルよりも狭く設定されています。もしもセンターセルの幅がセンター以外のセルと同じ幅であったならば、上記、左図の様に“ずれ”の量は60oになってしまい、マジックよりも大きなものになってしまいます。

この様に大きなセルをセンターに配置しても、安全上はなんら問題はありません。ただし、センターに生じる大きな“ずれ”によってパイロットにはグライダーの挙動が大きく伝わり非常に不安定なグライダーであるかの様な感覚を得てしまうでしょう。

そこでスポルトには上記、右図の様に30oの“ずれ”の量をもたらす他のセルより狭い幅のスタンダードセルがセットされ、パイロットが乗って面白いと思うコントロールの敏感さと、不安を感じる事の無い安定感の両方が見事に調和されています。


最後に、

新しいグライダーを創造する時、どんな設計者も“クラス最高の性能”を求め、最重要視する事でしょう。しかし私にとって、DHVのテストに合格し、そのクラスで最高の性能を持たせただけのグライダーを作る事は無意味です。自分が設定したレベルにおいて最高の性能を持っていること、又、そのレベルにあったDHVクラスに確実に合格させることは“必要な事”ではありますが、私にとって最も重要な事はレベルに応じた“適性”と“楽しさ”をそれぞれのグライダーに持たせる事なのです。

Airwaveのグライダーがなぜ世界中のパイロット達に支持されるのか?

その答えは我々のポリシーの中にこそあるのです.

Bruce Goldsmith